【スヴァールバル諸島】極夜が大嫌いだった私|8年間で変わった暗い冬との付き合い方

暮らし

スヴァールバルに移住してからの数年間、私は極夜が大嫌いでした。

太陽が昇らない季節を、一度も島から出ずに過ごすなんて絶対に無理。毎年、暗い時期には必ず旅行の予定を入れていたほどです。

ちょうどこの記事を書き始めた先週、スヴァールバルでは今年も極夜が始まりました。でも、移住8年目の今は、以前のように身構えてはいません。

この記事では、極夜を乗り切ろうと頑張っていた頃から、今に至るまでの心境の変化と、私なりの付き合い方を紹介します。

移住後の数年間は極夜が大嫌いだった

11月の極夜、正午でも真っ暗なロングイェールビーンに立つ世界各地への道標とシロクマ注意標識
11月中旬の正午ごろ。昼12時でも、スヴァールバルの空は真っ暗です

私は日本の雪国育ちで、雪のある暮らしや冬のどんよりした空には比較的慣れていました。

とはいえ、暗い冬が好きだったわけではありません。むしろ、カラッと晴れた青空や太陽の光に憧れていて、旅行先を選ぶなら、北欧より断然南欧派。

そんな私にとって、スヴァールバルの極夜はなかなか受け入れられないものでした。

太陽が見られないことはもちろん、何か月も暗い場所から抜け出せないような閉塞感も苦手。なんとなくいつも体がだるく、何をするにもやる気が出なくなるのも嫌でした。

極夜が始まる前の10月、凍り始めた川と夕日に照らされたロングイェールビーンの雪山
極夜が始まる約1週間前、10月中旬の正午ごろ。日がどんどん短くなり、凍り始めた川を見るだけで「また暗い冬が来るんだな」と憂うつになっていました

しかも、ここでは約3か月半も太陽が昇りません。極夜の前後も日が短いため、感覚としては一年の約4か月が暗い時期です。

この期間をずっと嫌だと思っていたら、一年の約3分の1を憂うつな気持ちで過ごすことになる。

そう考えて、家にいる時間をノルウェー語や資格試験の勉強に使ったり、暗い時期でも楽しめることを探したりと、何とか日々を充実させようとしていました。

一般的に紹介されている極夜対策も、いろいろ試していました。

  • 光目覚まし時計を使う
  • ビタミンDを飲む
  • 規則正しい生活を心がける
  • 週に数回、散歩や運動をする
  • 旅行など、楽しみになる予定を作る

今振り返ると、極夜を乗り切ろうとするあまり、自分にずいぶん課題を増やしていた気がします。

いつの間にか極夜が嫌ではなくなっていた

そんな私も、スヴァールバルで何年も暮らすうちに、少しずつ極夜への気持ちが変わっていきました。

移住8年目の今では、極夜が近づいても以前のように憂うつになることはありません。もちろん、極夜が好きになったわけでも、毎年楽しみにしているわけでもありません。

ただ、白夜が終わると「ああ、もうすぐ極夜だな」と思う程度。日本で秋から冬へと季節が移り変わるのと同じような感覚です。

その変化を特に感じるのが、旅行に対する考え方です。

以前は極夜のあいだに、日本への一時帰国や暖かい場所への旅行を必ず計画していましたが、今年は10月下旬になっても、まだ予定を立てていません。

もちろん、この先どこかへ出かけるかもしれません。それでも、以前のように「極夜のあいだに一度は島を出なければ」という焦りはなくなりました。

極夜の時期、飛行機の窓から見下ろしたロングイェールビーンの町の灯りと暗いフィヨルド
12月中旬、旅行の際に飛行機から眺めたロングイェールビーン。暗闇の中に町の明かりが浮かび上がっています

極夜を無理に克服しようとするのをやめた

極夜への気持ちが変わった背景には、以前ほど頑張りすぎなくなったこともあると思います。

やる気が出ない日は無理をしない

以前は、暗い時期だからこそ意識して体を動かさなければ、家にいる時間を有効に使わなければと、自分にいろいろな課題を与えていました。

でも、やる気が出ない日に無理して頑張ろうとしても、思うようにできずに落ち込むだけ。そんなことを繰り返すうちに、かえって気持ちが沈んでしまうこともありました。

今では、暗い季節はやる気が出ない日があっても仕方ないと割り切っています。

そもそも、海外で暮らしているだけでも大変なのに、何か月も太陽が昇らない冬を過ごしている。それだけでも十分頑張っているんじゃないか、と。

もちろん、日常生活に必要なことはしますが、生活に支障が出ない範囲なら、運動したくない日はしないし、勉強が進まない日があっても気にしません。

以前使っていた光目覚まし時計も、毎日セットするのが面倒で今は使っていません。ビタミンDも、気がついたときに飲むくらい。

極夜だからといって特別な目標を作ったり、毎日を充実させようと無理したりせず、今ではむしろ、自分を甘やかす言い訳にしています。

そうすると、だらけて過ごす日があっても罪悪感がなく、気がラクです。

極夜にやりたいことは、明るいうちに習慣にする

そんなふうに自分を甘やかしながら、何年か極夜をのんびり過ごしていると、今度はこの時間をもっと有効に使いたいと思うようになりました。

そこで、ここ数年取り入れているのが、極夜が始まる前に習慣を作っておくことです。

私の場合、家にいる時間を利用して取り組みたいノルウェー語の勉強や、健康のために続けたい運動などがこれに当てはまります。どちらも、やったほうがいいとは思っていても、つい後回しにしてしまうことです。

以前は極夜に入ってから目標を立てていましたが、ただでさえやる気が出にくい暗い時期に、新しいことを始めるのはなかなか大変。何度も挫折するうちに、やり方を変えることにしました。

今は、白夜が終わる8月下旬ごろから少しずつ始めるようにしています。ノルウェーでは夏休みが終わって新学期が始まる時期なので、何か新しいことをスタートするにもいいタイミングです。

遅くても9月末までには取りかかり、極夜が始まるころには習慣になっているのが理想。

それでも習慣にならなかったら、暗くなってから無理に頑張ろうとはしません。潔く諦めて、翌年、太陽が戻ってきたらまた挑戦すればいいと思っています。

こうして明るいうちから少しずつ始めておくことで、極夜のあいだも無理なく続けられるようになりました。

白夜はアクセル全開、極夜はちょっとした冬眠期間

スヴァールバルで暮らす年数が長くなるにつれて、明るい季節の楽しみ方も変わってきました。

春はスノーモービル、雪が解ければハイキングやボート。少しずつ行動範囲が広がり、今では太陽のある季節は外で過ごすことに大忙しです。

夏の週末の過ごし方は、家族でボートに出かけた日の様子でも紹介しています。

天気がいい日は、極夜のぶんまで太陽を楽しみたい。せっかく晴れているのに家にいるのはもったいないと、つい予定を詰め込んでしまいます。

白夜のスヴァールバルで、青空の下、雪山の尾根に立って両手を広げる筆者の後ろ姿
5月中旬のスヴァールバル。白夜というと夏のイメージですが、ここでは一面雪景色の春から白夜が始まります

そんなふうに何か月もアクセル全開で過ごしていると、楽しい反面、さすがに疲れもたまってくるもの。

だからこそ、極夜が近づいてくると、そろそろ少しペースを落としてもいいかなと思えるようになりました。今では、家でのんびり過ごす時間が増えるのも悪くないなと思っています。

また、観光シーズンが落ち着き、町に静けさが戻ってくるのも好きです。白夜のあいだは屋外活動に忙しい人たちも、極夜になると遠出する機会が減り、家族や友人、地域の人たちとのんびり過ごす時間が増えます。

極夜のロングイェールビーン中心部。ホテルやレストランが並ぶ、人通りのない雪道とイルミネーション
春や夏の観光シーズンにはにぎわうロングイェールビーンのメインストリートも、12月はひっそり

そして、暗い時期ならではの楽しみといえば、やっぱりオーロラです。とはいえ、必ず見に行こうと頑張るわけではなく、そのときの気分次第。見たいときに楽しむくらいがちょうどいいと思っています。

明るい季節には思い切り外で遊び、暗い季節には少しペースを落とす。そんな季節ごとの生活リズムができたことも、極夜を以前ほど嫌だと思わなくなった理由のひとつかもしれません。

まとめ|極夜を好きになる必要はなかった

今でも、太陽のある季節のほうが好きです。

でも、極夜だからといって、無理に毎日を楽しく充実させようとする必要はありません。

あれこれ対策を試していた頃より、今のほうがずっと気がラクです。

結局、極夜を無理に克服しようとする必要はなかったんだなと思います。