旅行の日程が近づくと、天気予報やオーロラ予報ばかりチェックしてしまう──
そんな経験はありませんか?
でも実際には、「晴れるかどうか」や「太陽活動が活発かどうか」を事前に正確に知ることはほぼ不可能です。
そんな中で唯一、何か月も前から分かるのが 月の満ち欠け。
月の状態は、その日の空の明るさに直結し、オーロラの見え方にも大きく影響します。

満月だと本当に見えにくくなるの?

新月が一番いいって聞くけど、実際どうなの?
この記事では、月明かりがオーロラ鑑賞に与える影響を、メリット・デメリットの両面から詳しく解説。
読んだあとには、自分の旅スタイルにぴったりな月のタイミングが分かり、オーロラ鑑賞がもっと楽しくなるはずです。
満月の日にオーロラは見える?

「満月の夜は明るすぎて、オーロラは見えないのでは?」
そう思っている方も多いかもしれません。
でも実は──
満月でもオーロラはちゃんと見えます!
もちろん、月明かりが強いぶん、弱いオーロラは背景の明るさに溶け込みやすくなります。
けれども、しっかりと強いオーロラが出ていれば、月光にも負けず、肉眼ではっきり確認できることも多いです。
月明りはオーロラにどれくらい影響する?
「じゃあ、月明かりって実際どれくらい影響があるの?」
そう疑問に思う方も多いはず。
やっぱり“真っ暗な新月”が理想に思えますが、必ずしも新月だけを狙う必要はありません。
というのも、月の明るさ(照度)は満月の前後だけ急激に強くなる性質があるからです。
例えば、満月の前後数日は見た目こそ「ほぼ満月」ですが、実際の明るさは満月の60〜80%程度。
月の縁が少し欠けるだけでも、照度は意外と下がるんです。
さらに、半月(上弦・下弦)になると、明るさは満月のわずか8〜15%ほどとされており、体感でもかなり暗く感じられます。
つまり、満月のど真ん中を避ければ、月が出ていても十分にオーロラ観測向きの暗さを確保できるということ。
旅行前に月齢カレンダーで満月のタイミングを押さえておけば、観測計画はぐっと立てやすくなります。
満月でのオーロラ鑑賞

満月でオーロラを見るメリット
「満月の日はオーロラ鑑賞に不向き」と思われがちですが、実は満月ならではの魅力もあります。
一番のポイントは、やはり“明るさ”です。
- 足元が明るく、歩きやすい
- 周囲の景色までくっきり見える
- 野生動物などの危険に気づきやすい
オーロラが見られる地域は、雪や氷で滑りやすい道が多く、慣れていない人には少し不安に感じられることも。
満月の夜は足元までしっかり照らされるので歩きやすく、近くに野生動物がいても早めに発見できます。
特に極夜の季節(太陽がほとんど昇らない時期)には、満月の光が貴重な“天然のライト”として活躍。
オーロラを待つ間も、月光に照らされた山や雪原などの北極圏らしい景色をじっくり堪能できます。
- 暗闇でもカメラ操作がしやすい
- 人物とオーロラを一緒に撮りやすい
- 夜空がほんのり青く写り、幻想的
満月の夜は明るいため、ヘッドライトや懐中電灯がなくても撮影準備ができ、周囲への配慮も不要。撮影にしっかり集中できます。
また、光量があるぶんシャッタースピードを短く設定できるので、人物撮影もブレにくくなるのがうれしいところ(寒い中でじっと動かずにポーズを取るのは意外と大変です)。
そして個人的に好きなのが、カメラに映る夜空の色。
淡いブルーに染まった空にオーロラが重なると、とても幻想的な一枚になります。
満月でオーロラを見るデメリット
満月の明るさは安心感をくれる一方で、オーロラ鑑賞では注意したい点もあります。
- 弱いオーロラが見えにくくなる
- 月と同じ方向に出ると、かすんで見えることも
満月の夜は空全体が明るくなり、光の弱いオーロラは月明かりに溶け込んで目立たなくなりがちです。
さらに、オーロラが月のある方向に出た場合は、たとえ強い光でも輪郭や色合いがふんわりしてしまい、繊細な揺らぎや色の変化が分かりにくくなります。
- カメラ設定に少し慣れが必要
- 明るさのバランスが取りづらい
満月の夜は露出オーバーになりやすく、設定調整にひと工夫が必要です。
たとえば、シャッタースピードを速めたり、ISO感度を下げたりして光量を抑えるのが基本ですが、下げすぎると今度はオーロラが暗くなってしまうことも…。
特に月とオーロラが同じ方向に出たときは、月光の強さでオーロラが埋もれてしまう場合があります。
月の明るさとオーロラの輝き、そのバランスをうまく取ることが、美しい一枚を撮るコツ。
とはいえ、慣れてしまえば心配無用です。
いくつか設定を試しながらカメラのクセをつかめば、満月の夜でもしっかりと印象的なオーロラ写真が撮れますよ。
新月でのオーロラ鑑賞

新月でオーロラを見るメリット
「オーロラ鑑賞には新月がいい」とよく言われる理由――それはやっぱり、“暗さ”が最大の強みだからです。
- 街の近くでも鑑賞スポットが見つけやすい
- 月の位置や方角を気にせず観察できる
- 星空もじっくり楽しめる
新月の夜は月明かりがないため、周囲がぐっと暗くなります。
そのおかげでオーロラの光がよりはっきりと際立ち、弱い光でも見つけやすくなります。
多少の街灯があっても、少し暗めの場所へ移動すれば観賞できる可能性は十分。
さらに月の方角を気にせず、空全体を見渡せるのも新月の魅力です。
光害の少ない場所では、頭上いっぱいに広がる星とオーロラが同時に楽しめる、そんな贅沢な景色に出会えることも。
オーロラ待ちの時間さえ、星空を見上げているだけで特別なひとときになります。
- 弱いオーロラも鮮やかに写せる
- 星とオーロラを一緒に撮影できる
暗ければ暗いほど、カメラは繊細な光の動きや色のグラデーションをしっかり捉えます。
定番の緑のオーロラはもちろん、赤やピンク、紫、青など、肉眼では見えにくい色も写真にはばっちり残せることも。
さらに、新月の夜はシャッタースピードを長めに設定できるため、ふんわり広がる弱いオーロラや満天の星もきれいに収められます。
色とりどりのオーロラと星空を一緒に撮影できるのは、新月ならではの贅沢な楽しみです。
新月でオーロラを見るデメリット
「新月はオーロラ鑑賞にぴったり」と言われますが、実は少し注意したいこともあります。
- 周囲の景色がほとんど見えない
- 足元や野生動物への注意が必要
新月の夜は月明かりがないため、本当に真っ暗です。
国立公園や山岳エリアなど、自然の中で見るオーロラは魅力的ですが、景色が見えないぶん方向感覚を失いやすく、足元の安全確認が難しくなります。
また、暗闇では野生動物に気づきにくいのも注意点。
北欧の郊外では「ヘラジカ注意」の標識をよく見かけますが、体長2〜3m、体重800kg近くにもなる大型動物です。
普段は人を避けますが、子連れの場合などは攻撃的になることも。

さらに、スヴァールバル諸島のようにホッキョクグマが生息する地域では、より慎重な行動が必要です。
ツアー参加ならガイドが安全管理をしてくれるので安心ですが、個人観賞の場合は事前の情報収集と安全対策を忘れずに。
- 背景が暗くなりやすい
- オーロラと人物の同時撮影が難しい
新月の夜はオーロラの光は際立ちますが、背景や人物の明るさが足りず、記念写真では顔が暗くなりがちです。
小型ライトやスマホのライトで顔を照らせば調整できますが、光の加減やカメラ設定には慣れが必要かもしれません。
また、暗い環境ではシャッタースピードを長めに設定することが多く、撮影中にじっと動かずにいるのが意外と大変。
特にオーロラと人物を同時にくっきり撮る場合、ほんの少しの動きでもブレの原因につながります。
初心者の方は、まず人物をシルエットで写す構図から試してみるのもおすすめです。気軽に挑戦でき、写真に雰囲気も出せますよ。
まとめ|月明かりとオーロラをどう楽しむ?
今回は、満月と新月、それぞれの月明かりの下でのオーロラ鑑賞や撮影について、メリット・デメリットを紹介しました。
どちらにも良さがあり、「満月=見えない」「新月=絶対おすすめ」と単純に言えるものではありません。
それぞれの特徴を整理すると、こんな違いがあります。
🌟満月と新月でのオーロラ鑑賞 比較
満月 | 新月 | |
---|---|---|
鑑賞 | 足元や周囲が明るく安心感あり。景色も見やすい。 | 真っ暗でオーロラが際立つ。ただし安全面に注意が必要。 |
見え方 | 強いオーロラはしっかり見えるが、弱い光は月明かりに溶けがち。 | 弱いオーロラもはっきり見える。星空とのコラボも楽しめる。 |
撮影 | 人物+オーロラが撮りやすい。夜空が青っぽく写り幻想的。 | 弱い光や色の変化まできれいに写せる。人物撮影は工夫が必要。 |
雰囲気 | 安心感があり、北極圏の景色も堪能できる。 | 星空が際立ち、静かな“宇宙感”を味わえる。 |
結局のところ、「どちらが正解!」というわけではなく、どんな雰囲気でオーロラを楽しみたいか、どんな写真を残したいかによって、最適な月齢は変わってきます。
旅行の予定を立てるときは、天気予報や太陽活動の予測だけでなく、月齢カレンダーもチェックしてみましょう。
事前に“月の満ち欠け”のタイミングを押さえておけば、旅の計画や撮影準備がしやすくなります。
満月でも新月でも、それぞれにしかないオーロラ体験が待っています。次の旅では、ぜひその違いを楽しんでみてくださいね。