オーロラ鑑賞といえば、カナダやアラスカ、フィンランドやアイスランドなどが定番。
しかし実は今、オーロラ好きの間でじわじわ注目を集めている“北極圏の穴場”があるんです。
それが、ノルウェー領のスヴァールバル諸島。
地図上ではオーロラベルトから少し外れているものの、実際に現地で暮らしてみると「こんなに見えるの!?」と驚くほどよく出現します。
今回は、そんなスヴァールバル諸島がオーロラ観測におすすめな理由を、8つの視点からご紹介します。
昼でも見えるオーロラ

スヴァールバル諸島は、世界で唯一「昼間にオーロラが見られる居住地」といわれています。
オーロラを観測するには「空が暗いこと」が条件ですが、ここでは昼間でも空が真っ暗になる極夜のため、観測条件が整っているのです。
島の中心地であるロングイェールビーンは、北緯78度という超高緯度に位置し、世界最北の町のひとつ。
このため、10月下旬から2月中旬までは太陽がまったく昇らない“極夜”の季節に入ります。
なかでも11月下旬から1月末にかけての約2か月半は一日中ずっと真っ暗で、条件がそろえば朝から夜までオーロラが見られることもあります。
昼間に現れるオーロラは、夜に比べて控えめではありますが、肉眼でもしっかり確認できることがほとんどです。
夜のオーロラは、早ければ夕方16時ごろに姿を現し、たいてい深夜1時ごろまでにピークを迎えます。
明け方まで夜ふかししなくても、しっかりオーロラ鑑賞を楽しめるのはうれしいポイントです。
意外と寒くない極地
「世界最北端の町」と聞くと、極寒をイメージしがちですが、実はそこまで厳しい寒さではありません。
スヴァールバル諸島の西側を流れる暖流のおかげで、同じ緯度にある他のエリアと比べて気温はやや穏やか。
もちろんノルウェー本土やアイスランドよりは冷え込みますが、真冬でもマイナス20度を下回ることはめったにありません。
たとえば、カナダやアラスカのオーロラ観測地と比べると、気温が10度ほど暖かいこともあります。
「北極圏でオーロラ観賞」と聞くと身構えてしまいそうですが、防寒対策をしっかりすれば、意外と快適に楽しめる環境です。
ロングイェールビーン | トロムソ | レイキャビク | セーリセルカ | イエローナイフ | フェアバンクス | |
---|---|---|---|---|---|---|
最高|最低 | 最高|最低 | 最高|最低 | 最高|最低 | 最高|最低 | 最高|最低 | |
10月 | -2 | -7 | 5 | 1 | 7 | 2 | 2 | -4 | 4 | -2 | 2 | -7 |
11月 | -5 | -11 | 2 | -2 | 4 |-1 | -3 | -10 | -7 | -14 | -12 | -20 |
12月 | -8 | -14 | 0 | -4 | 3 |-2 | -6 | -14 | -16 | -24 | -15 | -23 |
1月 | -9 | -16 | -1| -5 | 3 |-3 | -9 | -18 | -18 | -26 | -18 | -26 |
2月 | -9 | -17 | -1| -5 | 3 |-2 | -8 | -16 | -16 | -26 | -10 | -22 |
3月 | -9 | -17 | 1 | -4 | 4 |-2 | -3 | -14 | -9 | -21 | -3 | -19 |
街中からでも楽しめる

ロングイェールビーンは、人口約2,400人の小さな町。
周囲には雄大な自然が広がっていて、隣町もなければ強い人工の明かりもありません。
そのため、街中でも光害が少なく、少し暗い場所へ移動するだけで、オーロラが十分に楽しめます。
「もっと静かな場所でじっくり見たい」
「北極圏の大自然と一緒に感じたい」
そんな方には、オーロラツアーに参加するのもおすすめです。
ただし、スヴァールバル諸島にある道路は全体で約40kmのみ。
街の外には一本道が伸びているだけで、端から端まで車で約30分もあれば走りきれる規模です。
「晴れている場所を求めて移動する」といった観測スタイルは、あまり現実的ではありません。
実際、町はずれで見るオーロラと、街中で見るオーロラに大きな差はないことがほとんど。
また、ここでは長時間にわたって強いオーロラが出続けることはまれで、多くの場合は出たり消えたりを繰り返します。
そんな“気まぐれなオーロラ”と付き合うには、街中からの鑑賞が意外と快適。
寒くなったらすぐ宿に戻って休んだり、カメラの充電をしたり…自分のペースで観測できるのは大きな魅力です。
時間に縛られず、好きなときに、好きなだけオーロラを楽しめる──
それが街中鑑賞ならではの良さです。
全天カメラで空チェック
ロングイェールビーンから約15kmの場所には、スヴァールバル大学センター(UNIS)の観測所があります。
ここにはオーロラ研究のための全天カメラが設置されていて、空の様子をリアルタイムでチェックすることができるんです。
・Sony A7s All Sky Color Camera (UNIS)
このカメラを使えば、「今、オーロラが出ているかな?」というのを、手元のスマホやパソコンからサッと確認できます。
寒空の下でずっと待ち続ける必要もなし。
オーロラが現れるまでは宿の中でぬくぬくと待機して、体力を温存できます。
穴場だから旅費もおトク

冬はオーロラ目当てに多くの人が北極圏を訪れますが、スヴァールバル諸島を旅先に選ぶ人はまだまだ少なめ。
10月から1月の「極夜」の時期は観光のオフシーズンとされていて、訪れる人もぐっと少なくなります。
そのぶん、旅費を抑えやすいのが大きな魅力。
スヴァールバル諸島はノルウェー領なので、物価は基本的にノルウェーと同じく高めです。
一方で、宿泊費や航空券などは時期によって大きく変動するため、極夜のタイミングを選べば、お得に旅ができるチャンスも◎
特に、3〜4月や夏の7〜8月はハイシーズンとなり、宿泊価格がかなり上がる傾向があります。
【宿泊料金の目安(1泊)】
オフシーズン 10月~1月 | ハイシーズン 3~4月、7~8月 | |
ゲストハウス (バスルーム共用) | 1,000 kr ~ (約13,000円) | 1,800 kr ~ (約23,000円) |
シティホテル | 2,000 kr ~ (約26,000円) | 3,000 kr ~ (約39,000円) |
ラグジュアリー ホテル | 2,900 kr ~ (約38,000円) | 4,500 kr ~ (約59,000円) |
ちなみにノルウェー本土のトロムソでは、近年オーロラ人気が高まりすぎていて、ベストシーズンの宿泊費がニューヨークやロンドン並み、あるいはそれ以上になっているというニュースも…。
その点、ロングイェールビーンならオフシーズンでもしっかりとオーロラ体験ができるうえに、費用も抑えられる“穴場”スポットと言えそうです。
観光客が少ないからこそ、街中でも静かにオーロラを楽しめるのが魅力。
写真を撮るときに人が写り込んだり、余計なライトが入ってしまう心配も少なく、自分だけのとっておきの場所で、オーロラとの時間を過ごせます。
オーロラ以外の楽しみもたくさん


オフシーズンって、観光はできるの?
そんな心配も、スヴァールバル諸島ではご無用。
極夜のロングイェールビーンでも、観光客向けのツアーやアクティビティはしっかり用意されています。
特に人気のある体験:
- 犬ぞり体験
- スノーモービルで雪原を駆け抜けるツアー
- 氷の洞窟探検
- ヘッドライトを頼りに進むスノーハイキング
11月中旬〜1月下旬は、太陽が完全に昇らず、真っ昼間でも完全な暗闇に。
そんな“本物の夜”の中で体験するアクティビティは、まさに映画のワンシーンに迷い込んだような感覚を味わえます。
同じ北極圏でも、ここまで徹底した暗闇に包まれる地域はそう多くありません。まさにスヴァールバル諸島ならではの体験です。
天候が悪くて外でのアクティビティができない日には、こんな楽しみ方があります。
- 地元のビール醸造所を見学するツアー
- 歴史ある炭鉱を訪れるミニトリップ
- 博物館めぐり(Svalbard Museum、North Pole Expedition Museum)
街中には10軒以上のショップも並んでいて、オフシーズンでも通常営業。
おみやげ探しやウィンドウショッピングも楽しめます。
夜のお出かけも安心

ロングイェールビーンは治安がとても良く、観光客がトラブルに巻き込まれることは、ほとんどありません。
もともと小さなコミュニティで、住民同士の信頼関係も深いため、そもそも犯罪が起こりにくい環境が整っています。
実際、現地の多くの人たちは、夜に寝るときや外出時にも、家や車に鍵をかけずに暮らしているほど。
もちろん油断は禁物ですが、夜中にオーロラを見に出かけても、不安を感じる場面はほとんどないはずです。
夜の外出で唯一気をつけたいのは、「ホッキョクグマ」の存在。
とはいえ、街の中は基本的に安全とされています。
町の外れでオーロラを観賞する場合も、万が一に備えて、建物や車など「すぐに避難できる場所」をあらかじめ把握しておくと安心です。
オーロラよりめずらしい!?幻の空

最後に、ちょっとした“おまけの楽しみ”をご紹介。
スヴァールバル諸島の極夜シーズンは、昼も夜もない、まさに24時間真っ暗な世界。
しかし、そんな暗闇の空がときどき、ほんのり赤やピンクに染まることがあるんです。
この不思議な現象は「Red Sky Enigma(赤い空の謎)」と呼ばれています。
太陽の光がスヴァールバル諸島と北欧の間にできた成層圏の雲に反射し、その微かな光が極夜の空をほんのり染める──そんな、まさに奇跡のような瞬間です。
過去10年間でこの自然現象が観測されたのは、2014年、2015年、2018年、2021年、2023年と、毎年必ず見られるわけではありません。
つまり、オーロラよりもずっとめずらしい現象なんです。
極夜の時期にスヴァールバル諸島を訪れたら、こんな幻想的な光景に出会えるチャンスがあるかもしれません。

まとめ
今回は、スヴァールバル諸島がオーロラ鑑賞にぴったりな理由をご紹介しました。
まだまだ知名度は高くないけれど、だからこそ、静かにじっくりオーロラと向き合える“今がチャンス”の穴場スポットです。
「定番のオーロラ旅行では物足りない」
「北極圏の大自然と一緒に、特別な体験をしてみたい」
そんな方には、まさにぴったりの旅先です!
- 昼間にオーロラが見られる唯一の場所
- 高緯度のわりに穏やかな気温
- ツアーに参加しなくても、街中から気軽にオーロラ鑑賞ができる
- ライブカメラで、オーロラの出現をリアルタイムでチェック可能
- 極夜のオフシーズンは旅費を抑えやすく、静かな環境で楽しめる
- オーロラ以外のアクティビティも充実(犬ぞり・氷の洞窟・博物館など)
- 治安が良く、夜間の外出も安心
- 運が良ければ、オーロラより珍しい自然現象に出会えるかも
自力でオーロラを見に行くときに便利なアプリやウェブサイトも、こちらの記事にまとめています。あわせてチェックしてみてくださいね。