「北極の野生動物」と聞いて、真っ先にホッキョクグマを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
手つかずの大自然が広がるスヴァールバル諸島には、ホッキョクグマはもちろん、それ以外にもさまざまな野生動物が暮らしています。
この記事では、スヴァールバル諸島で比較的よく出会える動物たちをご紹介します。
旅先で目にする壮大な自然とともに、そこで生きる動物たちとの出会いも、ぜひ楽しんでみてください。
スヴァールバルで野生動物を見る魅力とは?
北極にほど近いスヴァールバル諸島は、静けさと厳しさが共存する“地の果て”のような場所です。
全体の面積はおよそ61,000㎢で、北海道よりやや小さく、最大のスピッツベルゲン島は九州とほぼ同じ大きさ。
そんな広大な土地に暮らす人の数は、わずか2,500人ほどしかいません。
町を一歩出れば、そこはもう野生動物の世界。
トナカイが町の近くを歩き、ホッキョクギツネやライチョウが山の斜面を駆けまわり、空には海鳥や渡り鳥が舞います。
ここでは、動物たちは「遠くから見る存在」ではなく、町のすぐそばでふつうに暮らす、当たり前の風景の一部です。
出会える野生動物8選
比較的高い確率で目にすることができる8種類の野生動物を、見かけやすい季節や特徴とあわせてご紹介します。
【野生動物の一覧】
↓気になる動物からチェック!
1. ホッキョクグマ

スヴァールバル諸島を象徴する野生動物。
世界最大のクマとして知られ、多くの訪問者が「一度は出会ってみたい」と願う存在です。
ホッキョクグマの体はなぜ寒さに強い?
北極圏の過酷な環境でも生き抜くホッキョクグマ。その秘密は、体のすみずみにまで張りめぐらされた“寒さ対策”にあります。
特に重要なのが、分厚い皮下脂肪と高密度の毛。脂肪は最大10cm以上にもなり、冷たい空気や海水から体をしっかり守ります。
毛は、内側のふわふわした保温用の毛と、外側の長くて硬めの毛が重なる二重構造。空気を閉じ込めて高い断熱効果を発揮します。
さらに…
- 毛は白く見えるが、実は透明で中が空洞。光を反射して白く見える
- 毛の下は黒い皮膚で、太陽の熱を効率よく吸収
- 小さな耳や鼻、丸みのある体型も、熱を逃しにくくする工夫のひとつ
また、ホッキョクグマの体はとても大きく、これも寒さへの適応のひとつです。
- オス:体長180〜260cm/体重300〜700kg
- メス:体重150〜350kg(オスより小柄)
とくに春から夏にかけては、狩りの成果によって体重が2倍近くに増えることも。蓄えた脂肪が長い冬を乗り越えるためのエネルギー源になります。
どれくらいの数がいるの?スヴァールバルでの生息状況
2004年の調査では、バレンツ海一帯(スヴァールバル含む)に約1,900〜3,600頭のホッキョクグマが生息していると推定されました。
このうち約半数は、スヴァールバル諸島内で繁殖していると考えられています。
とはいえ、ホッキョクグマは広範囲を移動するため、出会えるかどうかは完全に“運次第”。
それでも春〜初夏には、沿岸部や氷縁での目撃例が多くなります。
狩りの名手!アザラシをどうやって捕まえる?
ホッキョクグマは泳ぎも得意ですが、主な狩り場は海氷の上。
アザラシが氷上で呼吸したり休んだりする習性を利用して、氷のそばでじっと待ち構えます。
- 主な獲物:
- ワモンアザラシ
- アゴヒゲアザラシ
- タテゴトアザラシ など
特徴:
- 1.5km先のアザラシのにおいを感知できるほどの鋭い嗅覚
- 1頭のアザラシで約8日分のエネルギーを確保できる
- 数十km泳いで海氷を探すことも
ただ近年は、温暖化により海氷が減少。狩りの場そのものが少なくなっており、食料確保の難しさが深刻化しています。
実はけっこう雑食?意外な食べ物とは
本来はアザラシが主食ですが、近年は環境の変化に応じて柔軟に食性を変える姿も見られます。
実際にスヴァールバル諸島では、こんな行動が記録されています:
- 海鳥の卵を食べる
- 崖から海鳥を狙う
- トナカイを追いかけて捕まえる
- 座礁したクジラの死骸を食べる
トナカイを捕食する様子が撮影された例もあり、これまで考えられていたよりも“雑食的”な一面が注目されるようになっています。
- 春〜初夏(4月〜6月):氷が残っているこの時期は、アザラシの繁殖期とも重なり、遭遇チャンスが最も高まる。
- 7月以降:内陸や沿岸に移動し、観察難易度はやや上がるが、出会える可能性あり。
2. スヴァールバル・トナカイ

スヴァールバル諸島の固有種で、世界でもこの地にしかいない珍しいトナカイ。
遭遇率が高く、とても身近な野生動物です。
どうして脚が短いの?寒さに適応した体のしくみ
スヴァールバルトナカイは、他の地域のトナカイと比べて脚が短く、体つきが丸みを帯びているのが大きな特徴。
この体型は、寒さから身を守り、限られたエネルギーを効率よく使うために進化してきたものです。
脚が短い理由とそのメリット:
- 地面との距離が近く、体温が逃げにくい
- 歩くのに必要なエネルギーが少なく、効率よく動ける
- 吹きつける風を避けるため、雪のくぼみに体を沈めやすい
また、全体的にコンパクトで丸い体型も、熱の放出を抑えるのに効果的です。
角と毛色にも見られる“北極仕様”
- オス・メスともに角が生えるのもこのトナカイの特徴。
毎年生え変わり、オスは夏の終わり、メスは春に角が抜け落ちる。 - 毛色は季節によって変化。
夏は茶色っぽく、冬は白っぽい灰色になり、雪景色に溶け込む保護色の役割を果たす。
夏の間にひたすら食べるワケ
スヴァールバル諸島の夏はとても短く、植物が育つ期間もごくわずか。
この限られた期間中、トナカイたちはほとんど休まず草やコケを食べ続けます。
目的はただひとつ――冬を乗り切るための脂肪をためること。
植物が豊富な時期にどれだけ栄養を蓄えられるかが、生き延びられるかどうかを左右します。
- 条件がよければ、1頭で10kg以上の脂肪を蓄えることも
- この脂肪が、冬の間のエネルギー源となります
実際、夏と秋では体重に大きな差が出ます。
- オスの体長:約160cm / 体重:春 65kg → 秋 90kg
- メスの体長:約150cm / 体重:春 53kg → 秋 70kg
- 通年で観察可能
(町や郊外でもよく見かける) - 6〜8月:活動が活発で、群れで草を食べている様子を観察しやすい。
- 冬:雪原にいるが、動きが少なくなるため見つけにくくなる。
3. ホッキョクギツネ

スヴァールバル諸島を歩いていると、ときどき姿を見せるホッキョクキツネ。
その愛らしい見た目に反して、極寒の地でもたくましく生きる、小型の肉食動物です。
氷点下でも平気!体に隠された工夫
ホッキョクギツネは、極寒の地でも活動できるように進化した動物です。
体全体が、まるで断熱材のような“寒冷地仕様”になっています。
- 体長:約60cm
- 尾の長さ:約30cm
- 体重:2.5〜5kg
小柄で脚も短く、体の熱を逃しにくい構造になっています。
寒さへの適応には、以下のような特徴があります:
- 毛は外毛と内毛の二重構造で、−40℃でも活動可能
- 足の裏にも毛が生えており、氷の上でも冷たさを感じにくい
こうした特徴のおかげで、ホッキョクギツネは極寒の中でも元気に動き回ることができるのです。
2つの毛色タイプ、白型と青型の違いとは

ホッキョクギツネには、「白型」と「青型」という2つのタイプがあります。
【白型】
・冬:全身が真っ白になり、雪にまぎれやすい
・夏:背中が茶色っぽく、腹側は淡い色へ変化
【青型】
・通年:濃いグレーや黒に近い色合い
・冬:やや明るくなるが、基本的には濃い色のまま
スヴァールバル諸島では白型が約84〜97%を占めており、青型はまれです。
- 通年で観察可能
- 春〜秋(特に6〜8月):活動が活発になり、巣穴の近くなどで見かけるチャンスが増える。
4. スヴァールバル・ライチョウ

ふっくらした体に、ちょこちょこと歩く愛らしい動きが特徴のスヴァールバル・ライチョウ。
人をあまり怖がらない個体も多く、観察や撮影にも向いています。
足まで羽毛!寒さに強い体のひみつ
ライチョウは、スヴァールバル諸島で一年を通して見られる唯一の野鳥です。
特に冬のあいだも島にとどまる数少ない生き物として、厳しい環境に適応した体のしくみを持っています。
体長:35〜40cm
体重:490〜1,200g(秋〜冬にかけて増加)
最大の特徴は、全身を覆う断熱性の高い羽毛。
足の指まで羽毛で包まれており、まるで「羽毛の靴」を履いているかのようです。
これにより…
- 雪の上でも冷たさを感じにくく、安定して歩ける
- 強い風を避けるときは、地面に浅いくぼみを掘って身を沈める
また、ライチョウはあまり飛ばず、地面をちょこちょこと歩いて移動するのが基本。
その姿は可愛らしいだけでなく、限られたエネルギーを効率よく使うための行動でもあります。
羽の色が変わる?季節の変化に合わせて

スヴァールバル・ライチョウは、季節に応じて羽の色を変えることで、周囲の風景に溶け込みます。
これは外敵から身を守るための、優れたカモフラージュでもあります。
冬(11月〜3月)
・オス・メスともに全身が真っ白に
・飛ぶと外側の尾羽だけ黒く見えるのが特徴
夏(4月〜9月)
・メス:春(4〜5月)に赤褐色の羽に換わる
・オス:7月ごろまで白い羽を保ち、その後茶色に変化
9月末ごろから再び羽が白くなり、冬への準備が始まります。
- 通年で観察可能
- 6〜8月:草地などでの活動が増え、比較的見つけやすくなる。
5. セイウチ

スヴァールバル諸島の海岸では、セイウチが何頭も集まって寝そべっている姿がよく見られます。
現在、周辺海域にはおよそ2,000頭が生息しているとされており、年間を通して観察のチャンスがある野生動物です。
見た目の迫力は北極最大級!
セイウチは、北極圏に生息する哺乳類の中でもひときわ大きな体を持つ動物です。
- オス:体長 約3.5〜4m/体重 約1,000〜1,500kg
- メス:体長 約2.5〜3m/体重 約600〜800kg
- キバの長さ:最大 約1m(重さ 約5kg)
上下に長く伸びたキバ(犬歯)は、オス・メスともに持っており、以下のような場面で活躍します:
- 氷の上に上がるときに使う“つかまるための道具”として
- 群れの中での優位性を示すシンボルとして
その迫力ある見た目とは裏腹に、性格はおだやか。
岸辺でのんびりと横たわるセイウチの姿は、スヴァールバル諸島の夏の風物詩にもなっています。
赤くなったり白くなったり?変わる体の色
セイウチの皮膚は通常、赤茶色(シナモンブラウン)ですが、状況によって色の見え方が変化します。
- 潜水直後:血流が減り、白っぽく見える
- 日向ぼっこ中など:血管が開き、ピンク色がかって見えることも
これは体温を調整するための生理的な反応で、寒暖差の大きい北極の環境に適応したしくみです。
海でも陸でも自由自在!群れで暮らすセイウチ

セイウチは、水中と陸上のどちらでも自由に行動できる動物です。
泳ぎが得意で、長時間の潜水もお手のもの。主に貝を探して海底を移動します。
- 潜水時間:20〜30分近く
- 潜水の深さ:平均20〜50m、最大で100m近く
- 潜水中は鼻が自動的に閉じ、水の侵入を防ぐしくみを持つ
陸上では、海岸や砂地で群れをつくって集団で休む姿がよく見られます。
とくに夏には、何十頭ものセイウチがのんびりと寄り添って寝そべる光景も。
また、セイウチは社会性の高い動物としても知られています。
群れの中では明確な順位関係があり、オス同士は以下のような方法で立場を示します:
- キバを使って威嚇する
- 体を張って自分の強さをアピールする
- うなり声、笛のような音、パチパチ音など、多彩な鳴き声
繁殖期以外はオスとメスで別々の群れに分かれて過ごし、成熟したオスの中には単独で行動する個体もいます。
- 通年で観察可能
- 4月〜8月:海岸でのんびり休んでいる姿を観察しやすい。
6. アザラシ

一年を通して出会える可能性のあるアザラシ。
多くは氷の上で静かに休んでいるか、水面近くで呼吸しているため目立ちにくいですが、発見できたときにはじっくり観察する楽しみがあります。
どんなアザラシに出会える?
この地域で比較的よく見られるアザラシは、以下の2種です。

ワモンアザラシ / Ringed Seal
体長:約1.3〜1.6m
体重:50〜100kg
特徴:体に輪のような模様がある小型のアザラシ。単独行動が多い

アゴヒゲアザラシ / Bearded Seal
体長:約2.1〜2.7m
体重:最大400kg
特徴:太くて長いヒゲが名前の由来。がっしりとした体で、氷の上や海岸に寝そべる姿が印象的
※このほか、ゼニガタアザラシやタテゴトアザラシなども、まれに観察されることがあります。
ワモンアザラシ:小柄で適応力の高いアザラシ
ワモンアザラシは、北極圏で最も個体数が多いとされるアザラシです。
スヴァールバル諸島周辺にも、数十万頭が生息していると考えられています。
最大の特徴は、厚い海氷の中でも自分で呼吸孔(穴)を開け、維持できること。
前足の爪を使って氷に穴を開け、その穴を繰り返し使うことで、他の種が入りにくい流氷域でも暮らすことができます。
ワモンアザラシは単独行動が多いため、見つかりやすく、ホッキョクグマによく狙われるアザラシでもあります。
アゴヒゲアザラシ:大柄でおだやかな性格
アゴヒゲアザラシは、北極圏に生息するアザラシの中でも最大級の体格を持つ種類です。
特にメスは春先に体重が400kgを超えることもあります。
スヴァールバル諸島では数千頭の個体が確認されており、氷の上や海岸で寝そべっている姿を見かけることが多いです。
名前の由来にもなっている白くて太いヒゲは、乾くとカールすることもあり、見た目にもユニークな印象を与えます。
性格はおだやかで警戒心が薄い個体も多く、人の気配をあまり気にしません。
そのため、比較的近い距離から観察や撮影がしやすいのも魅力のひとつです。
- 春〜初夏(4〜6月):観察に最適なシーズン。流氷の上で休んでいる姿を見かけやすい。
- 夏以降(7月〜):海中で過ごす時間が長くなり、遭遇率はやや下がる。
7. 海鳥

夏のスヴァールバル諸島は、まさに海鳥たちの季節。
数十万羽にもおよぶ海鳥が飛来し、海と陸を行き来しながら繁殖の時期を迎えます。
圧倒的な数とスケールで迎える“海鳥の夏”
スヴァールバル諸島で確認されている鳥類は約240種。
このうち、毎年繁殖のために訪れるのは約45種とされていますが、その密度は驚くほど高く、北極圏の短い夏を一気に彩ります。
- 数万〜数十万羽が断崖に集まり、巨大なコロニー(繁殖地)を形成
- 鳴き声と羽ばたきが響き渡る、にぎやかな夏の風物詩
- 6〜8月の繁殖のピークには、海岸線や崖全体が“鳥のエリア”に
このような一斉繁殖の光景は、スヴァールバルの夏ならではの迫力ある自然体験です。
カラフルなくちばしが目印!ニシツノメドリに注目

観察ツアーでも特に人気の高い海鳥が、ニシツノメドリ(Atlantic Puffin)。
赤や黄色が混ざったカラフルなくちばしと、丸みを帯びた体型から、「海のピエロ」という愛称でも知られています。
主な特徴と行動:
- 巣は断崖の隙間や草地の斜面に作る
- 小魚をくわえて、海と巣の間を何度も往復
- 水中では羽ばたくように泳ぎ、空中でも軽やかに飛翔
空でも水中でも自在に動けるニシツノメドリは、環境への適応力が高い海鳥です。
スヴァールバル諸島では比較的見つけやすく、近くでその姿を観察できるチャンスも多くあります。
スヴァールバルでよく見られる海鳥
スヴァールバル諸島では、夏になるとさまざまな海鳥たちが一斉に飛来し、それぞれの場所で繁殖活動をおこないます。
ここでは、観察の機会が多い代表的な種類をご紹介します。

ハシブトウミガラス / Brünnich’s Guillemot
黒と白のツートンカラーが特徴的。夏には沿岸の断崖に何千羽もの群れで集まり、鳴き声と飛翔がにぎやかに響きます。

ハジロウミバト / Black Guillemot
全身が黒く、白い羽斑と赤い足がよく目立つ小型の海鳥。岸辺や岩場で見られることが多く、つがいで行動する様子もよく観察されます。

フルマカモメ / Northern Fulmar
アホウドリに似た大型の海鳥で、風を使って滑空する姿が印象的。夏の船旅では、船の周囲を優雅に舞う姿が見られることもあります。

ミツユビカモメ / Black-legged Kittiwake
白を基調とした明るい姿と、澄んだ鳴き声が特徴の小型カモメ。断崖に密集して巣を作るほか、港や船の近くでもよく現れる身近な海鳥です。

キョクアジサシ / Arctic Tern
地球を往復する世界一の長距離移動鳥として知られるキョクアジサシ。スヴァールバルでは夏に営巣し、低空飛行で虫や小魚を捕らえます。鋭く鳴きながら頭上を舞う姿に驚かされることも。

ケワタガモ / King Eider
繁殖期のオスは、鮮やかな色彩で観察者の目を引きます。スヴァールバルの沿岸や湾内で見られ、岩場で休んだり群れで泳ぐ姿が観察できます。
- 夏(6〜8月):海鳥観察のピーク。
クルーズや沿岸ツアーでは、複数種の海鳥を一度に見られるチャンスも。 - 9月以降:渡りが始まり、鳥の数は大きく減少する。
8. クジラ

夏のスヴァールバル諸島は、クジラに出会いやすい季節。
冷たい海に集まるプランクトンや小魚を追って、さまざまな種類のクジラがこの海域を訪れます。
通年で見られる!“定住型”のクジラ
スヴァールバル周辺には、年間を通してこの海域にとどまるクジラがいます。

シロイルカ / Beluga
真っ白な体と丸みのあるフォルムが特徴的。
“海のカナリア”と呼ばれるほど鳴き声が多彩で、群れで行動します。
スヴァールバルで最も遭遇率が高いクジラです。

イッカク / Narwhal
オスだけが持つ、らせん状にねじれた長い牙が特徴。
“北極のユニコーン”とも呼ばれ、最大で1,000m以上の潜水が可能。
野生での観察は非常にまれです。

ホッキョククジラ / Bowhead Whale
極厚の脂肪に覆われ、一生を北極海で過ごす大型クジラ。
体長は約18m、体重は最大100トンにも。
氷縁部でまれに観察されることがあります。
夏に姿を見せる“回遊型”のクジラ
夏になると、南の海から餌を求めて北上するクジラもスヴァールバル海域に姿を見せます。

ミンククジラ / Minke Whale
全長8〜10mほどの小型種で、俊敏な動きが特徴。
船の近くに突然現れることもあり、フィヨルド内でも比較的よく見られます。

ナガスクジラ / Fin Whale
全長20mを超える、世界で2番目に大きなクジラ。
潮吹き(ブロー)や背中の見え方で見分けやすく、複数頭で行動することが多いです。

ザトウクジラ / Humpback Whale
長い胸びれやジャンプ(ブリーチング)が迫力満点。
“歌うクジラ”としても知られ、観察ツアーで特に人気があります。
地球最大の動物!シロナガスクジラ

近年、スヴァールバル周辺でも目撃されるようになってきたのがシロナガスクジラ(Blue Whale)です。
- 最大体長:約30メートル
- 最大体重:約200トン以上
地球史上最大の動物であり、出会えたらまさに一生モノの体験。
特に夏のフィヨルドでは目撃例が報告されています。
たまに出会える、ちょっとレアなクジラ類
あまり多くはありませんが、以下のような種類が観察されることもあります。

シャチ / Killer Whale
白と黒のはっきりした模様と大きな背びれが特徴。
オスの体長は約9m、体重5.5トン以上に達します。
スヴァールバル諸島のフィヨルド内にも、ときおり姿を見せます。

ハナジロカマイルカ / White-beaked Dolphin
体長約2.5〜3m。白いくちばしが名前の由来で、北大西洋に生息する中型のイルカ。
群れで行動し、船の波に乗って遊ぶ姿が見られることもあります。
- 夏(6〜8月):クジラ観察のベストシーズン。
ミンククジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラなどが回遊し、シロナガスクジラが現れることも。 - 通年で見られる種類:
シロイルカは一年を通して観察可能(特に夏が見やすい)
現地在住者が選ぶ!よく出会うスヴァールバルの野生動物ランキング
スヴァールバル諸島への旅を計画中なら、「実際にはどんな動物と出会えるの?」というのは気になるところですよね。
ここでは、現地在住歴6年の筆者が、日々の生活の中で実際によく目にする動物たちを、リアルな遭遇率ベースでランキング形式にまとめました。
観光の参考として季節や場所をイメージしながら、ぜひ読み進めてみてください!
1位:トナカイ
一年を通して最もよく見かけるのがトナカイ。
ロングイェールビーンの町中でも普通に歩いており、ときには自宅の窓から見えることもあるほど。
町の風景の中に溶け込むように暮らしている、とても身近な野生動物です。
2位:海鳥
夏になると、スヴァールバルの空と海は一気ににぎやかに。
クルーズやボートツアーでは、船の周囲に集まる海鳥の姿をよく目にします。
特にニシツノメドリ(パフィン)は、穏やかなフィヨルドに浮かぶ姿が高確率で観察できます。
3位:ライチョウ
一年中この島にとどまる唯一の鳥類で、遭遇率も高め。
春~秋にかけては、町周辺の丘や山の斜面でもよく見かけます。
極夜のあいだは見つけにくいですが、それ以外の季節は比較的安定して出会える野鳥です。
4位:ホッキョクギツネ
町の中心部にはあまり現れませんが、郊外や町周辺の山の斜面では比較的高い頻度で目撃されます。
とくに春〜秋は活動的で、町のはずれや道路沿いで姿を見かけることも。
5位:セイウチ
セイウチは「お気に入りの場所」に繰り返し戻ってくる習性があります。
ロングイェールビーンの近郊にもそうした定番スポットがあり、夏には浜辺でのんびり寝そべる姿がよく見られます。
6位:クジラ
夏になるとクジラの目撃情報が一気に増加。
シロイルカ(ベルーガ)は特に遭遇しやすく、町のあるフィヨルドの奥まで入り込むこともあります。
ミンククジラも比較的よく姿を見せる種類のひとつです。
7位:アザラシ
アザラシは、町から少し離れたエリアでの観察が中心。
クルーズ中や海上での移動時に、流氷の上で休んでいる姿に出会えることがあります。
生活圏内で見かけることは少ないものの、出会えたときのうれしさは格別です。
8位:ホッキョクグマ
出会いたいような、出会いたくないような…複雑な存在。
町周辺で目撃された場合には、現地警察がすぐに対応するため、通常の生活圏で出会うことはまずありません。
それでも、年に数回は住民や旅行者が遭遇してしまうケースも。
ちなみに、筆者自身はこれまでに2回、クルーズ中にホッキョクグマに遭遇しています。
まとめ
スヴァールバル諸島では、一年を通してさまざまな野生動物に出会うチャンスがあります。
とはいえ、動物ごとに「特に出会いやすい時期」があるのも事実。
季節ごとの傾向を知っておくことで、旅のプランもぐっと立てやすくなります。
動物別・出会いやすい季節ガイド
(◎=特に出会いやすい)
動物名 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10〜3月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ホッキョクグマ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ | △ |
トナカイ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○(通年) |
ホッキョクギツネ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○(通年) |
ライチョウ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○(通年) |
セイウチ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ |
アザラシ | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ | △ |
海鳥 | △ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | ✕ |
ニシツノメドリ | ✕ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ✕ | ✕ |
クジラ類 | ✕ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | ✕ |
シロイルカ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○(通年) |
どんな動物に出会えるかは、その日その時の運次第。
けれど、北極の静けさの中で思いがけず現れる野生動物との出会いは、きっと旅の思い出に残る特別な瞬間になるはずです。