かつて炭鉱の町として栄えた、スヴァールバル諸島のロングイェールビーン。
今でも町のあちこちには、当時の炭鉱設備や建物の名残が残っていて、歩いているだけでその時代の雰囲気が伝わってきます。
そんなロングイェールビーンの“過去の物語”にふれることができるのが、炭鉱見学ツアー。
数ある半日ツアーの中でも、特に人気のあるアクティビティのひとつです。
今回、実際にこの炭鉱ツアーに参加してきたので、当日の流れや見どころをレポート形式でご紹介します!
「炭鉱ってどんなところ?」「ツアーはどんな雰囲気なんだろう?」と気になっている方にも参考になると思います。
スヴァールバル旅行を計画中の方は、ぜひ旅のヒントにしてみてくださいね。
- 歴史や遺跡に興味があって、現地の背景をもっと知りたい
- 雨や雪の日でも楽しめるアクティビティを探している
- 極夜(真っ暗な冬)の時期に訪れる予定
- 午後のフライト前、ちょっとした時間を有効に使いたい
炭鉱ツアー基本情報

スヴァールバル諸島の中心地・ロングイェールビーンは、実は“炭鉱の町”として始まった場所。
その名前も、1906年にこの地で石炭の採掘をスタートさせたアメリカ人実業家、ジョン・マンロー・ロングイヤー(John Munro Longyear)にちなんで名づけられました。
彼が築いた炭鉱事業はのちにノルウェー石炭会社へと引き継がれ、現在でも「Gruve 7」では採掘が続けられています。
そんなロングイェールビーンの成り立ちを肌で感じられるのが、炭鉱見学ツアー。
スヴァールバルの歴史に触れられる、人気の半日アクティビティです。
ツアー内容:タイムカプセルのような「Gruve 3」へ
訪れるのは、町の近郊にある炭鉱のひとつ、「Gruve 3」。
ここでは実際に鉱山内へ入り、採掘の様子や炭鉱労働者の暮らしを体験できます。
1996年に突然閉山されたこの炭鉱には、当時の採掘機や作業設備がそのまま残されており、まるで時間が止まったかのような空間が広がっています。
荒々しい作業現場の空気感をそのまま感じられる、臨場感たっぷりのツアーです。
案内は英語またはノルウェー語で、参加者の言語にあわせてガイドしてくれます。
Gruve3はどこにある?
Gruve 3はスヴァールバル空港の裏手に位置し、ロングイェールビーンの中心部からは車で約10分。
このエリアはホッキョクグマの出没リスクがあるため、徒歩での個人訪問は不可。ライフル携帯の必須エリアに指定されています。
ツアーでは専用の送迎車があるので、安全&スムーズに現地へ向かえます。
ツアー開催スケジュール
ツアーは基本的にクリスマスシーズンを除き、毎日開催。午前と午後の1日2回制です。
所要時間は約3時間で、フライト前の午前観光や午後からの予定にも組み込みやすいのが魅力。
月曜日~日曜日
・午前ツアー … 9:00~12:00
・午後ツアー … 13:00~16:00
ツアー料金
通年で同一料金となっていて、ユース・シニア割引も用意されています。
- 大人 … 950 NOK
- ユース(12〜15歳) … 600 NOK
- シニア(67歳以上) … 700 NOK
炭鉱ツアー体験記
ここからは、実際に私が炭鉱ツアーに参加したときの様子をレポート形式でご紹介します!
参加したのは10月上旬の日曜日、午前の部。
この時期はちょうど観光のオフシーズンに入りかけた頃で、参加者はわずか7名という少人数ツアーでした。
ガイドを含め、私以外は全員ノルウェー人。
中には英語があまり得意でない年配の方もいて、この日はノルウェー語でのガイドに。
普段はさまざまな国の旅行者が参加するので、基本的には英語で案内されることが多いです。
ツアー当日の流れ
- 9:00滞在先ホテルでピックアップ
- 9:15Gruve3に到着
- 9:20炭鉱施設内へ
- 9:30レクチャー
- 10:15トイレ休憩&着替え
- 10:30坑道内を見学
- 12:00ツアー終了・送迎
滞在先ホテルでピックアップ
炭鉱ツアーにはホテル送迎が含まれており、朝は宿泊先からのスタート。
この日は少人数だったこともあり、ガイドが運転するワゴン車での送迎でした。参加者が多い日には、大型バスでのピックアップになることもあります。
鉱山は空港の裏手にある山の斜面に位置していて、道中では世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)もちらりと見られます。
鉱山に到着|炭鉱施設内へ

ホテルからGruve 3までは車でわずか10分ほど。
現地に着くと、まずは施設の外で簡単な説明があります。
炭鉱の入り口は山の中腹にあり、フィヨルドや氷河を一望できる絶好の撮影ポイント!
写真好きな方はしっかりカメラの準備をしておきましょう。
レクチャータイム|炭鉱の歴史に触れる

施設の中に入ると、まずは当時の炭鉱夫が使っていた休憩室へ案内されます。
ここでガイドによる約40分間のレクチャー。
内容は、ロングイェールビーンの炭鉱の成り立ちや、鉱山で働いていた人たちの暮らしについて。
途中で短い映像も流れるので、言葉がすべて分からなくても雰囲気で理解できる構成になっています。
炭鉱夫の服装にチェンジ!

いよいよ坑道へ!……その前に、希望者は作業服に着替えることができます。
当時の炭鉱夫たちと同じようなつなぎを着て、より臨場感のある体験ができるだけでなく、防寒&汚れ防止にもなるので、ぜひ着替えるのがおすすめ!
着替えをしない場合でも、ヘルメット・ヘッドライト・グローブは全員に貸し出されます。
- つなぎ服(希望者)
- ヘルメット
- ヘッドライト
- グローブ
坑道内へ|炭鉱の過去にタイムスリップ

Gruve 3では、1971年〜1996年までの25年間、石炭採掘が行われていました。
まずは、外の建物にある作業場へ。
そこには、閉山当時そのままの機械や工具がずらり。
誰もいなくなった作業場に、時間が止まったような空気が漂っています。

さらに、実際に炭鉱夫が使っていた鉄製支柱を持ち上げてみる体験もあり、当時の作業の過酷さがリアルに伝わってきます。

世界種子貯蔵庫の原点へ
坑道の中では、ヘッドランプの灯りだけを頼りに、暗闇の道を進んでいきます。
途中、全員でライトを消すシーンもあり、完全な闇と静寂に包まれる貴重な体験も!
そして辿り着くのが、現在の世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)の原型となった場所。
1984年、北欧遺伝子バンクによって、山の自然な温度だけで種子が100年保管できるかの実験が行われました。
現在も5年ごとに種子の状態をチェックするプロジェクトが続けられていて、2084年まで継続予定とのこと。
施設内部には入れませんが、ツアーでは入り口を見学することができます。

炭鉱夫の“仕事”を体験!
最後は、当時の炭鉱夫たちが挑んでいた狭い坑道での作業体験。
Gruve 3の石炭層は、わずか60〜90cmの厚さ。非常に狭い空間で採掘作業をしなければいけませんでした。
ツアーでは同じサイズのトンネルが用意されています。その中を実際に這って進むことで、当時の過酷な労働環境を身をもって感じることができます。

ツアー終了|ホテルまたは空港へ送迎
坑道を抜け、来た道を戻ればツアーは終了!
希望者は坑道内の石炭を1個、お土産として持ち帰ることもできます。

帰りは、行きと同じワゴン車でホテルまで送迎。
事前に相談しておけば、空港への直行送迎にも対応してもらえます。Gruve 3から空港までは車で約5分とアクセスも良好です。
スヴァールバル空港は小規模なので、フライトの1時間前到着でも余裕をもってチェックインできます。
もし不安な方は、あらかじめ街中のスーパーに設置されているセルフチェックイン機を使って、搭乗手続きと荷物タグのプリントを済ませておくとさらに安心ですよ。
午後発の便を利用する人にとって、この炭鉱ツアーは午前中の時間を有効活用できる、ぴったりのアクティビティです!
ツアーの予約方法
炭鉱ツアーの予約は、インターネットからが一番便利!
現在、主に3つの方法があります。

料金はどのサイトでも同じなので、自分に合ったスタイルで選んでOKです。
公式ホームページから
Gruve3の公式サイトから、ツアーを予約することができます。
予約ページでは、当年いっぱいのスケジュールがまとめて確認可能。
公式サイト経由だと安心感はありますが、予約完了=キャンセル料発生となるので注意。
(例:22日前まではツアー料金の5%、21~8日前は50%、7日前以降は100%)
予約サイトから
Visit Svalbard(英語サイト)
Visit Svalbardは、スヴァールバル諸島の公式観光局が運営する予約サイト。
こちらも数か月先までのスケジュールをチェック&予約できます。
条件は公式サイトと同じで、予約の完了後にキャンセルする場合はキャンセル料がかかります。
GetYourGuide(日本語対応あり)
「英語サイトはちょっと不安…」という方には、日本語対応のGetYourGuideがおすすめ!
他のサイトと違い、直前までキャンセル料がかからないのは大きな安心ポイント。
予定変更にも柔軟に対応できるので、旅行プランにまだ余白を持たせたい方にもぴったりです。
まとめ
今回は炭鉱見学ツアーの実際の様子や流れをご紹介しました。
スヴァールバル諸島の現地ツアーはアウトドア体験がほとんどなので、どうしても天気に左右されてしまいます。
一方でGruve3の炭鉱見学ツアーは、極夜で暗い時期や天候に関係なく一年中楽しむことができます。
また、炭鉱ツアーの所要時間は3時間と短く、他のツアーやフライトまでのすきま時間の観光にちょうどいい長さです。
炭鉱ツアーに参加すれば、ロングイェールビーンの町の歴史的な背景が分かり、街歩きがもっと楽しくなるはずです。
観光スポットの候補として、ぜひ検討してみてくださいね。
炭鉱ツアーのあとは、炭鉱で栄えた当時からある建物を改装したレストランでの食事もおすすめです!